劇場版 ドクターX FINAL

PRODUCTION NOTES

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  • #2ope.2
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ope.1 クランクイン~米倉涼子も驚きの扮装~ ope.1 クランクイン~米倉涼子も驚きの扮装~

米倉涼子が扮する大門未知子が、2年ぶりに帰って来た。2023年9月9日~10月30日、2024年3月7日~4月18日まで、2期に分けて撮影が行われた『劇場版ドクターX』。クランクインの最初の撮影となったのは、映画本編においても最初の手術風景。シーン “0”とナンバリングされた同場面は30年前の回想シーンで、まさに今回の物語の発端となる。そのオペを執刀している外科医こそ神原晶で、まずは岸部一徳から撮影はスタートした。
満を持して米倉が撮入を迎えたのは、9月26日の都内ロケ。いよいよ未知子の登場となったが、なぜかよれた格好で髪も乱れていて……!? それもそのはず、ここで撮影されたのは、映画序盤のタイトル明けのシーン。海から這い上がって来た未知子が、森本光と食堂を訪れている場面だ。現場に登場し米倉は、森本を演じる田中圭やスタッフに笑顔で挨拶。あらたまった雰囲気はなく、まるで昨日も撮影していたかのような空気に、シリーズの歴史の長さとチームの絆の深さが感じられる。米倉は、「クランクインなのに、この髪型!?(笑)」。髪の崩れは、米倉が自ら手掛けたのだとか!
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シーンとしてはショック状態だった未知子が一気に飲み食いして息を吹き返していくところだが、米倉も同様に感覚を取り戻してテンションを上げていく。生ビールを一気に飲み干すカットでは、内山聖子エグゼクティブプロデューサーが冗談で、「大門未知子というより、米倉涼子だよね(笑)」。どこかやんちゃでお茶目なところも、米倉の魅力にして未知子の魅力。まさにあの未知子が帰って来たと感じさせる、明るく華やかなクランクインとなった。
10月1日には東帝大学病院のロケで、大間正子を演じる今田美桜、加地秀樹を演じる勝村政信、原守を演じる鈴木浩介、海老名敬を演じる遠藤憲一もクランクイン。9日に特別室のセットで蛭間重勝を演じる西田敏行、神原名医紹介所のセットで城之内博美を演じる内田有紀も撮入している。ついに動き出した、シリーズの最新作にして最終作。期間にして約8カ月、日数にして約1か月半に及ぶ撮影がスタートした。

ope.2 現場のチームワーク~恒例行事のハロウィンボード~ ope.2 現場のチームワーク~恒例行事のハロウィンボード~

かつては銭湯だった神原名医紹介所の事務所で、麻雀卓を囲む大門未知子、城之内博美、加地秀樹、原守、そして神原晶。にぎやかな掛け合いのシーンをモニターでチェックして、博美を演じる内田有紀が「懐かしいね、この感じ!」と顔をほころばせる。とにかく笑いが絶えない、本シリーズの撮影現場。合間はもちろん、段取りやテストの最中でもコミカルな芝居や不意のアドリブに周囲がどっと沸く。
例えば、緊急オペのシーン。台本では海老名敬が「俺がオペする!」と言い出し、未知子がすかさず「助手だよ」と返す展開になっていたが、段取りで米倉涼子の芝居の迫力に圧された遠藤憲一は思わず自分から「助手する!」。ここでも笑いが起こる中、いかにも未知子と海老名らしいやりとりということで、田村直己監督はこのやりとりを採用。そんなところから、「ドクターX」らしさが作り上げられていく。
皆が皆、撮影を楽しんでいて、シーンを面白いものにしようとしていて、何より作品を愛していればこその笑いで笑顔。また長年のシリーズだけに、キャストとスタッフは気心も知れていて結束力も強い。新しく参加したスタッフも、すぐに馴染んでいく。前期のスタジオ撮影で現場を楽しませていたのが、美術スタッフが手掛けたハロウィンボード。キャスト・スタッフのメッセージ付き撮りおろし写真と、ハロウィン飾りをデコレーションしたボードで、毎年、秋クールに撮影されてきた本シリーズではこれを掲示するのが恒例行事。楽しそうに写真とメッセージを眺め、ボードを前に記念撮影をするキャスト・スタッフ陣の姿も見られた。
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ope.3 ルーツを知る旅~呉ロケと3人の未知子~ ope.3 ルーツを知る旅~呉ロケと3人の未知子~

いかにして大門未知子は、孤高の天才外科医“ドクターX”となったのか。本作では森本光が未知子の生まれ故郷である広島・呉を訪ね、そのルーツをたどっている。撮影にあたっては、実際に呉でロケを敢行。2023年9月12日~15日まで4日間にわたって行われ、森本を演じる田中圭もここからクランクイン。重要伝統的建造物群保存地区の御手洗、野坂地区海岸、倉橋町海越地区などで撮影が実施された。
その呉に暮らす、未知子の医学生時代の同期・河野明彦を演じるのは、綾野剛。未知子役の米倉涼子とは「新聞記者」(Netflix/22年)で一緒になっていて、田中とは「さよならロビンソンクルーソー」(CX/10年)以来の共演。今回の共演の合間には、笑顔で何やら語らっていたふたり。未知子を通して、これまでの綾野と田中と米倉の関係を通して、温かな絆を感じさせる撮影、シーンとなった。また、小学生の未知子に扮したのは、さまざまな映画・ドラマに出演している山田詩子。医学生時代の未知子を八木莉可子が演じ、未知子のルーツを描く。さらに、キューバ留学時代の姿も活写。こちらは米倉涼子がまた違う一面をのぞかせながら、“ドクターX”となる以前の未知子を演じている。
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ope.4 医療シーンの舞台裏~未知子が戻った瞬間~ ope.4 医療シーンの舞台裏~未知子が戻った瞬間~

手術シーンも大きな見どころとなっている、本シリーズ。劇場版では、回想も含めて7件ものオペの様子が描き出されている。その撮影は、シリーズを重ねるごとに進化。細部までこだわり抜かれていて、用意されている器具や装置は該当する手術に見当たった本物で、患者の人体には精巧に作られた人形を使用。切開するカットでは切り口に着色した食用肉を貼り付け、リアリティーを生み出している。
また、医療それ自体も時代とともに刻一刻と進化している。細かなところで言えば、オペの準備をするシーンだ。医療ものでよく目にするのは、硬いブラシで時間を掛けて指先や爪の間までゴシゴシと磨いている姿。本シリーズでも同様だったが、近年は消毒がメインになってきているということで、それに合わせて描写を変更。リアルな医療の今を切り取ってもいる。説明を受けたキャスト陣は、皆、驚きながら感心していた。
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シリーズ開始当初こそ、撮影に時間が掛かっていたという手術シーン。医療ものの撮影は医療監修の先生方の指導を受けながら進められていくのが主流だが、本シリーズの場合、そこに加えて演出部に医療担当のスタッフもいる。先生方から事前に学んだ流れをキャスト陣に説明して、動きを確認。その中でキャスト陣が芝居を考え、田村直己監督が芝居を付けていく。また、そのキャスト陣も慣れたもの。基本的な所作や用語、医師役としてそのシーンに合わせてすべきことは身についていて、病室で患者の様子を見るシーンでは、大門未知子を演じる米倉涼子が自ら、「まずバイタル(=生体情報モニター)を確認したほうがいいですか?」。シリーズを通じて、キャスト陣も進化している。
そんな米倉も苦労していたのが、医療用語が続く長ゼリフ。染谷将太が扮する神津比呂人とディスカッションする場面で、本番では淀みなく医療用語を口にして、未知子の真剣な表情をのぞかせる。同シーンが撮影されたのは米倉が現場に入って3日目。その芝居を見守っていた田村直己監督は、米倉にひと言、「未知子が戻ったね」。本人もそう感じていたのか、監督の言葉に「ね」とほほ笑んだ米倉。何より医療に真摯に向き合ってこその大門未知子で、「ドクターX」。細部までのそのこだわり。フィクションではあってもファンタジーではない誠実な描写が、緊張と感動につながっている。

ope.5 最大・最悪・最強の敵~染谷将太もまた凄腕~ ope.5 最大・最悪・最強の敵~染谷将太もまた凄腕~

東帝大学病院の新病院長・神津比呂人と、双子の弟・神津多可人を一人二役で演じた染谷将太。「ドクターX」には初参加で、田村直己監督が演出を務めた作品では「生徒諸君!」(EX/07年)に出演。米倉涼子とはNHK大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」(03年)で同じシーンに登場しているが、本格的な共演は初となる。手術風景を見下ろしながら、大門未知子のことを、「オバサン」と言ってのける比呂人。同シーンの撮影の段取りでは、染谷のセリフを受けた米倉がすかさず「うるさい!(笑)」と冗談で返して、染谷も吹き出していた。
初めての手術シーンにも挑んだ染谷だったが、その滑らかな所作にはスタッフ陣も感嘆。あまりに出来過ぎで米倉も「怖いくらい!」と評していた。そんな染谷は2023年9月19日にクランクインして、2024年3月24日に東帝大学病院・病室のセットでクランクアップ。米倉から花束が贈られ、田村直己監督から抱擁を受けた。「こんな役とは出会えないという役に出会わせていただきました」と挨拶すると、中学生の染谷を知る監督は「大人になったね」。大人にして大物の風格でシリーズ史上 “最大”“最悪”“最強”の敵を演じ上げた。
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ope.6 田村直己監督の演出~首をかしげることの意味~ ope.6 田村直己監督の演出~首をかしげることの意味~

 田村直己監督いわく、宿願だったという「ドクターX」の映画化。監督にとって今作は、2022年の『七人の秘書 THE MOVIE』に次ぐ2作目の劇場作品となる。
テレビ朝日の演出家としてこれまで数々のドラマを手掛けてきていて、米倉涼子と初めて組んだのは「交渉人~THE NEGOTIATOR~」(08年)。翌年の第2シリーズ、「ナサケの女~国税局査察官~」(10年)を経て、同作のスペシャル版が放送された12年秋に「ドクターX」が始動。シリーズ全作を手掛け、この間に「リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~」(18年)も担当している。7作にわたって「平成仮面ライダー」シリーズ(03~09年)も演出。「ドクターX」は西部劇のテイストを狙ったというが、ニヒルなのにコミカルで、スタイリッシュなのにエネルギッシュな活劇の演出こそ、監督の魅力と言えるかもしれない。
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一方で、点と点を結んで、芝居の展開としても人間の生理としても無理のない自然な流れで線を引き、それを心地良く伸ばしていく。そんな綿密さにも監督のすごさがある。映画序盤の食堂のシーンで、森本光から「(僕のこと)忘れちゃったんですか」と詰められる場面。ここで監督は米倉涼子と話して、未知子が思い出せないとばかりに首をかしげる芝居を付けている。そのあとに続くのは、店主が読んでいた新聞に未知子がふと目をやる場面。どうすれば会話の中で違和感なく新聞に視線を移せるか。首をかしげる演出こそ、その答えだ。
今作のある撮影前のひとコマ。段取りが始まるという中、専門的なセリフと動きが呑み込めずに、「分かんない!(笑)」と冗談で駄々をこねる米倉。これに監督は、「OKと言ってください!(笑)」。そんなコントのような掛け合いもあれば、一方でじっくりとセリフの意味やシーンの意図について話し込むことも多かったふたり。その関係性は、さながら未知子と師匠の神原晶。監督の緻密にして大胆な演出にも注目だ。

ope.7 クランクアップ~米倉涼子が見せた涙と笑み~ ope.7 クランクアップ~米倉涼子が見せた涙と笑み~

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泣き笑いで語られる言葉を、スタッフたちもまた泣き笑いで聞いている。これは、今作での米倉涼子のクランクアップの風景。2024年4月18日、『劇場版ドクターX』の撮影はついにゴールテープを切った。
まず3月20日に、大間正子役の今田美桜が東帝大学病院・第一手術室のセットでアップ。3月24日には東帝大・会議室のロケで、シリーズ初参加となった東村練役の西畑大吾、そして海老名敬役の遠藤憲一、加地秀樹役の勝村政信、原守役の鈴木浩介、さらに蛭間重勝役の西田敏行が撮了。西畑は、「皆さんが優しく温かく迎え入れてくださって、走り抜くことが出来ました」と挨拶。素直で愛嬌たっぷりで、真面目。どんなときも「はい!」ときちんと返事をして、芝居に真剣に打ち込んでいた西畑は、現場から愛される存在ともなっていた。
また、鈴木は挨拶で思わず涙。これを受けて、「たぶん僕は泣かない(笑)」「俺も泣けねぇなぁ(笑)」と言っていた勝村と遠藤が愛に溢れた挨拶を披露した翌日の3月25日に東帝大・特別病室のセットで城之内博美役の内田有紀もアップ。「あと数日、よねちゃんを支えて走ってください!」と激励を贈っていた。
ついに迎えた、最終日。ここでは洞窟をロケ場所として、映画冒頭の要塞のシーンが撮影されていった。神原晶役の岸部一徳も参加して、高官と報酬のやりとりをするシーンも撮影。そう、岸部のラストカットなったのは、恒例となっている報酬受け取り後の軽快なスキップ。岸部も「ここまでやらされるとは思わなかった(笑)」と笑いながら、最後のスキップにしみじみ。拍手が贈られる中、岸部は米倉に「ありがとうね」と言って現場を後にした。
そして、米倉のラストカット。闇の中に毅然と立つ未知子の顔が収められて、すべての出番は終了。セレモニーが始まると、そこに帰ったはずの岸部の姿が!そのサプライズに瞳を潤ませながら、米倉の挨拶は始まった。作品への思い、関わっている人たちへの思い、病気への思い、またここまでの間に他界していった仲間への思い、そして映画化への思い。終わりにして、そんな思いも感じさせた米倉の言葉。12年の歴史を刻んできた「ドクターX」はここに終わる。しかし、『劇場版ドクターX』はここから始まっていく。米倉の涙と笑みが、それを示していた。
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